万引き家族 評論

大変に分かりにくい映画です。
少しでもよそ見をすると、内容が分かりにくくなり
誤解が生まれるような映画です。

これは是枝監督が、意図的にそのように仕掛けたもので
映画の頭の話の大半がフェイクです。

その最大のフェイクは家族のつながりです。
あの家族は、誰一人血が繋がっていません。




映画の途中で拾った子供「ゆり」「祥太」(共に誘拐)
だけではありません。

【ここから一気にネタバレになります】

いきなり、最大の謎になる祖母からいきます。
本当は最後にとっておきたい話ですが、これを書かないと先が繋がりません。

祖母は映画の終盤にかけて亡くなり、家に埋められてしまいますが
その家には、実は「長男の部屋」がパンフレットに記載されています。
しかし長男の部屋は一度も映りません。
何故でしょうか?
通常で行くと、リリーフランキー演じる柴田治が長男になりますので
必ず一度や二度は撮影されても良いはずです。
しかしその部屋は一度も映画には出て来ません。
いや、もしかしたら映ったかもしれません。彼女を埋めたシーンで。
しかしなぜ長男の部屋が使われなかったのでしょうか?

おそらく、長男はあの家族の中にはいないからです。
そこで刑事の言葉を思い出して頂きたいのですが
「全員、犯罪で繋がった家族か」
とぼそっと呟いています。


そしてリリーフランキーが穴を掘って埋める時、「まさか二度も掘るとはな・・・」と呟いています。

リリーフランキーと妻の信代は、再婚になるようで
以前には信代に夫がいたようです。
信代が拘置所?で「あんたは前(前科)があるから」と呟いていますので
おそらく埋めたのは夫でしょう。

なぜ前夫の話をするかと言うと
祖母の長男と年齢が合う人物は、この信代の前夫しかおりません。

ここからあくまでも私の想像ですが

信代の前夫(故人)が、祖母初枝(樹木希林)の長男ではないでしょうか?
おそらく初枝と長男、信代で暮らしていたところを、リリーフランキーが入り、前夫を殺害、埋めたんだと思います。
一般的に息子を殺された男と一緒に暮らす事は考えにくいと思いますが
母息子の関係が良好だったとは限りません。
その上、初枝が一人で生きるには今の時代は大変に世知辛く
彼らを招き入れたと考えてもおかしくないのです。
(と書いても幸福な家庭しか知らない方には理解し難い事かもしれませんが)

信代の妹、亜紀ですが
彼女もまた家族とは誰とも血が繋がっていません。
彼女は祖母初枝の、別れた夫が別の女性と作った子供のさらに子供になります。
なので、初枝にとっては好きな男性の子供にはなりますが血縁関係はなく、孫のように可愛がっていますが心情は計り知れないものがあります。
愛した男と、その男を奪った女の子供から生まれた子供。
大変に複雑な心境であったのは間違いありません。
また、祖母初枝は、その両親(初枝の元夫と奪った女の子)から、何らかの弱みを握って金を無心しています。これだけ長期間、金を無心出来るのは、おそらくはただの不倫ではなかったと思われます。
脅迫行為に近い関係と、その子供を孫として面倒を見る。
この不思議な関係には、まだ謎が残っています。


次に夫婦ですが、これも実際に婚姻関係を結んでいるかは疑問です。
名目上、苗字は同じですが
前夫を殺害している以上、婚姻関係を結ぶのは難しいと思いますが
もしかしたら、だからこそ彼らはあの場所で結婚しているのかもしれません。
これだけ血縁のない家族の中で、もしもあの二人だけが正式に夫婦だとしたら、それは救いかもしれませんね。

子供の血縁関係が無いことは、映画の中心になっているので省きますが
信代は「盗んだんじゃない。誰かが捨てたのを拾ったんだ。」と小さな声で、しかし強い口調で呟いています。

これは実は信代さんの物語だったのかもしれません。
彼女を中心に家族が形成され、あの中では最も良識があったと言えるでしょう。

万引きはダメです。
祥太はその事に、薄々気づいていました。
この映画の表向きの主役は
祥太と治です。

祥太は信代や駄菓子屋の主人、そして自ら学んだ本の知識の中から
自分の良心に問いかけを続け、最後は万引きを引き金に家族を「意図的に崩壊」させます。
そこには、子供ながらに、これ以上はこの家族と繋がっていてはいけないという正義感からだったのでしょうか?
これははっきりと分かりません。
しかし、最後に父と一夜を過ごし、そして別れ際にバスに乗っても一度も振り返らない。
彼が「父を追い抜いた」瞬間でした。

可哀想なのは、ゆりちゃんでした。
彼女は幼い目で、これから何を見るのでしょうか?
おそらく、映画を見ている多くの方が彼女のいく末を見つめて泣いた事でしょう。
しかし、彼女があの場で居続ける事も実は出来ませんでした。
もしも彼女があの場で育ち成長したら、彼女は学校へ行けません。
その後の彼女は、どうやって生活費を稼ぐのでしょうか?
その時、おそらく亜紀ちゃんを思い浮かべてください。
彼女自身は学があるにも関わらず、風俗まがいの仕事をしています。
そこに監督の意図があるのではないでしょうか?
ゆりちゃんが成長したとしても、おそらくは風俗まがいの仕事しか見つからないのです。
彼女は、彼女自身で解決していくしかなかったのです。
しかし彼女1人では幼すぎて解決出来ないでしょう。

そこで、もう一人の祥太をもう一度、思い浮かべてください。
彼がなぜ、家族を崩壊させたか、もう一度考えてみましょう。

答えはすぐには出ません。
これは答えを用意したエンターテイメントではないのです。
これは哲学や文学であり、答えは各々で考えるしかありません。

しかし、もし、貴方が虐待されている子供を見つけてしまったら

児童相談所全国共通ダイヤルについて
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/gyakutai/

ここを参照に189へ電話して下さい。

私たちに出来ることは、ごく僅かです。
そして答えはあまりにも無数に存在するように見えて戸惑います。
答えを探している余裕がないときは、少ない出来ることを
ただ実行するしかないのだと思います。


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諸々の判断は、個々に審査して自己責任で活用ください

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古本屋エイジロメン 店長ブログ 高次脳機能障害と仕事と日々の暮らしと… 園田広宣
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