Blue bottom 青蝿 劇団東京倶楽部 劇評 稀有なまでに有能な役者が揃った劇団

Blue bottom 青蝿を見てきました。
周囲の意見を聞きますと、「昭和っぽい」と言うコメントがとても多かったが
しかし私には、むしろ現代っぽいなと感じた。

特に、主人公が日本人と韓国人のハーフだと言うことが
非常に現代っぽい。
私の友人にも韓国人は多いが、在日韓国人
在日韓国人同士で結婚するパターンが多い。
在日韓国人と日本人のハーフは、想像以上に少ない。
それはやはり在日韓国人と、日本人の大きな隔壁があるのだろう。
だからこそ主人公は、在日韓国人の仲間からも距離を置かれ
日本人からも距離を置かれる立場にあるのだろう。

その中で物事を解決しようとして
ボクシングの頂点に立つと言う終着点は昭和のドラマっぽいですね。

主人公の父親は失読症と言う症状に侵されている。
文字が読めない、文章が読めないと言うタイプは、実はボクサーには多い。
いわゆるパンチドランカーと言うやつだ。
この脚本家はボクシングと言うものをよく知っているのだろう。
主人公の父親はもともと失読症であったが、あの動きを考えても
普段から喧嘩慣れしていたと言うことなんだろう。

舞台はいわゆる韓国人街、ドヤ街のような場所で
主人公の父親が日本チャンピオン目指しながら倒れていくと言うシーンから始まる。
主人公は当初、子供役をしているのだが
あの強面の顔に見つからないほど、子供役がしっかりと作られていた。
その後は成人男性としてボクサーを目指すわけだが
その一人二役(?)が非常によくできていて、素晴らしい演技力だなと感嘆した。
韓国人街の中にはいろんなタイプの人たちがいて
明らかに中国人であったりオカマであったりする人たちがいた。
その組み合わせが面白く、深刻なドヤ街の環境を明るくさせた。
坂本つとむさんという方が音楽を担当して何度も芝居を一呼吸おかせてくれる
そのタイミングがとても良かった。

在日韓国人の中にはその恵まれない環境から
チンピラやヤクザに、身を落とす者がいる。
私の友人にも1人、そのような人がいて喧嘩っぱやく、とても心配したものだ。
飲み屋でスーツ組に、「在日」と罵倒されて大立ち回りになったときには
たまたま私も隣にいて、椅子を蹴り倒して威嚇したものだ。
むしろ、その時に仲良くなったのかもしれない(^_^;)
若かりし頃の話だ。
話を戻そう。
そんな中で、韓国人街から飛び出そうとする若者がいることを
私はたくさん見てきた。
しかし、在日であることが彼らの職域を狭めてしまうのだ。
肉体労働や飲食店など仕事は大幅に限定されてしまう。
特に朝鮮学校出身の在日は、その出身から在日である事が分かるので
日本では歓迎されなかった。
また彼らも、狭いコミニティーの中で生活していたので
日本人とのコミニケーションが難しいものが少なくなかった。

この作品はそういった在日韓国人の事情が
ものに映し出された稀有な作品であると感じた。

細かい点を話してみよう。
在日韓国人の中で、唯一主人公の母親だけが吃りと言う
不思議な現象が起こっていた。
この舞台の中で、在日韓国人は多数出てくるのに
吃りを発生させているのは彼女だけだ。
おそらく彼女にはそのような病気(脳関係)があるのだろう。
だからこそ父親は彼女のことを天使だと発言したのだと思う。
障害者が天使かどうかは置いておいて
主人公の父親が彼女を奪ったことによって
激怒していることの、非常に大きな要因となっている。
しかし、そのような病気があるからこそ、主人公の父親は彼女に惹かれたのかもしれない。

父親の、大学行かなかったからと言う冗談は
どれほどの人がわかったかな?

主人公の母親の祖母は、親子対立には中立的な立場だが韓国人街の
土地を譲ろうとせず、それもまた争いの一環となっている。
在日韓国人の自分たちの居場所を守ろうとする強い意志は
個人的には充分理解できるのだが、現代においては難しいかもしれないと考えている。
在日韓国人たちのコミニティー自体がやや弱まっているように感じている。

いまどき地上げなんて話が古いと思われるかもしれないが
それは違うと思う。
2020年の東京オリンピック直前になって
不動産価格が高騰し
実際に地上げ屋が動いている。
これはやはり、現代の話なんじゃないかなと私は思う。

チンピラたちの立ち回りについては少し疑問があって
主人公の兄貴分が最後にヤクザに打たれて
倒れ込んだ時、ちょっと個人的には納得がいかなかった。
拳銃で撃たれた時、ヤクザが腰(腹側)に拳銃を押し込んで
ドスで主人公の兄貴を刺しに行ったのだが
仮に私なら、腰にはささない。
ドスのトドメもしない。
そのまま拳銃で頭を吹っ飛ばす。

正面からドスで腹を刺したなら、拳銃を奪われる可能性が高い。
仮に手負いの相手でも、得物を奪われたら命取りになりかねない。
そんな油断しまくりのヤクザがいるだろうか?
逆に、腹を刺されたならその状態のまま固定し、相手の腹を探って拳銃を奪い
コメカミからゼロ距離で相手の頭を撃ち抜く。
今時、腹を刺したぐらいじゃ致命傷にはならない。
江戸時代じゃないんだから。横に薙ぐ必要がある。

ラストシーンなんだが、そのまま韓国の歌を続けて欲しかった。
途中でテーマ曲がHEROになった瞬間、ラグビーでも始まるのかと思ったよ。
いいじゃないか、イムジン河の美しさを称える歌の横で、男たちが殴り合う。
その対比がまたカッコよく見えたと思うのだが。
なんなら韓国語で歌ってもらっても構わなかった。
一度聞いているのだから、曲を聴けば韓国語でもわかったと思う。

ちょっとテーマが多すぎたかもしれない。
ボクシング、在日、ヤクザ、地上げ、八百長問題、政治
個人的には面白かったが、ついて来れた人がどれだけいたのかわからない。
ただ、どの役者の演技力も素晴らしかった。
ボクシングシーン、しっかりと体を作り込んでいて
誰もがボクサーと信じただろう。
今の時代に、あの小さな小劇場で、あれだけの芝居が見られる劇団は
早々には見つからない。
本当は毎公演、毎年の公演みたい位だが、仕事の都合でなかなか…悔しいところだ。
体も弱くなってきてなかなか遠出をした次の日は
体調を崩しがちになってしまっている。良くないなぁ。


どうでもいいんだけど、いつも毎公演で差し入れを何にするか迷っていて困っていて
もし役者の方が見ていてくれたら、1番嬉しかった差し入れ何か教えてください。


あくまでも個人の主観にて記載しております。
諸々の判断は、個々に審査して自己責任で活用ください

医学に関して、当方は患者であり医学者、治療者ではありません
全ての判断は個人にお任せしております
当方のブログを見て実践した事による損害に関しては
一切の責任は当方にありません

こちらのブログは著作権が園田広宣にございます
無断での複写、公開は著作権法の範囲で違法になる場合がございますので
どうぞご理解いただければと思います。

皆様のご協力、そして応援に、深く感謝しております



古本屋エイジロメン 店長ブログ 高次脳機能障害と仕事と日々の暮らしと… 園田広宣
はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって
サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、
Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。